
「イ」から始まる植物


イチョウ
中生代ジュラ紀に繁栄した樹木の生き残り(生きた化石)と言われています。古い時代に中国に留学した僧が持ち込んだといわれ、日本各地の寺社の境内などに銘木の存在が知られています。秋の黄葉が魅力で、晩秋の黄葉後に強い寒さに遭うと一気に落葉し、あたかも黄色い蝶が群れ飛ぶ姿を思わせ、都会の秋を演出する一番の見どころです。
イヌザクラ
主に本州以南の山地に生える落葉高木で、高さは10mほどになります。春に細いボトルブラシのような総状花序をつけます。サクラの仲間ですが、花がそれほど目立たないために、「イヌ」ザクラと呼ばれます。ほかに、若木や小枝の樹皮が白っぽいことからシロザクラ、花の向きからシタミズザクラ(下不見桜)の別名があります。果実ははじめ黄赤色で、熟すと紫黒色になります。材は建築、楽器、木工細工などに用いられます。
イヌザンショウ
山地や林縁などに自生する落葉低木で、高さは1〜3mほどになります。7〜8月ごろに淡緑色の小花を咲かせ、10月頃に果実をつけます。果実が熟すと裂けて黒い種子が顔を出します。枝にはトゲが互生し、対生するサンショウと見分けられます。イヌザンショウという名前は、サンショウほど葉や実が香らないことによります。果皮は打撲や捻挫のための外用薬になり、内服すると咳に効くとされます。
イヌシデ
自然風の雑木植栽によく用いられる樹種の一つで、シロシデの名前で呼ばれて親しまれています。葉はやや大きく、秋には黄色く黄葉します。白い縦じまの入った幹や野性味のある樹形などが見所です。
イヌツゲ
小さい葉が密につき、剪定に耐え萌芽力が強いので、生垣用樹としてよく知られた樹木の一つですが、古くは各種の仕立物としても多く生産されていました。花は淡黄白色で小さく目立ちませんが、雌雄異株で秋に雌木に熟す黒い実は、野鳥の食餌木として知られています。
イヌブナ
ブナに比べて材質が劣るため、役に立たないものの例えで使われる『いぬ』の文字をつけて呼ぶようになったといわれています。ブナに比べて葉が薄く、幹が黒みを帯びるなど、魅力にやや欠けるので造園樹木として用いることはあまりありません。落葉高木で大木になりますが、地際からひこばえが生えるので、株立ち状になる特性があります。
イヌマキ
日本庭園に利用される代表的な主木の一つで、マツの代わりに利用されることもあります。濃緑色の細い葉が密生し、耐潮性や耐風性が大きいことから、臨海部の防潮、防風植栽として生垣や高垣などに、また、比較的自由に刈り込んで仕立てられる特性を利用して、動物などの姿に仕立てるトピアリーなどにも利用します。秋に熟す実の果床は赤く熟し、甘く食べられます。
イブキ
日本では本州から九州の海岸などに自生する常緑高木。高さは20mほどになり、幹がねじれるのが特徴。ビャクシンという名でもよく呼ばれ、仲間にミヤマビャクシンやハイビャクシンなどがあります。寺社などによく植えられており、古木の中には天然記念物に指定されている個体もあります。材は床柱として賞用されるほか、器具材、鉛筆材にも利用されました。